【取材】海外在住看護師はいかにして最初の一歩を踏み出したか?|看護師ドットワークス

海外在住看護師は、いかにして最初の一歩を踏み出したか?(インタビュー)

木川さんは看護師11年目の30歳代の女性です。日本で5年間看護師として勤務しワーホリを利用し海外移住。帰国後は看護師に復帰し婚約者と出会いました。現在はオーストリア在住で現地での看護師免許取得を目指し勉強中です。

日本と海外とを行き来する木川さんに人生観・仕事観を取材しました。将来、海外移住を考えている看護師さんはぜひ参考にしてみて下さい!

日本での看護師経験

看護師になった経緯を教えてください。

木川さん

金銭的な理由で大学進学は難しかったので、公立で学費が安い看護学校を選びました。もともと小さい頃から看護師に憧れがあったとかではないですが、高校生となって進路を考えるころには看護師になりたいと思うようになりました。

看護師になってどうでしたか?※

木川さん

良かったと思っています。看護学校は厳しく、就職してからも辛い時がありました。それでもやりがいを感じて仕事ができ、トータルして看護師になったことはいい選択だと思います。

日本ではどのような看護師経験をしてきましたか?

木川さん

三次救急の公立病院で5年間勤務しました。ワーホリに行った後は老人保健施設、派遣で救急病棟・透析室・ツアーナース・訪問入浴・デイサービス・検診・医院・老人ホームの経験があります。

看護師になってどうでしたか?※

木川さん

よかったと思っています。看護学校は厳しく、就職してからも辛い時がありましたが、それでもやりがいを感じて仕事ができたのでトータルして看護師になったことはいい選択でした。

日本での看護師時代の印象的なエピソードを教えてください

木川さん

老人保健施設で働いていた頃に90歳前後の男性入居者さんが食事中に意識消失を繰り返していました。はっきりした原因はわかりませんが、恐らく全身状態の循環動態が悪かったのだと思います。しかし、とても「食べる」ことが大好きな方だったので、ご本人の食べる意思はとても強かったです。

当日、私はその場に居合わせなかったのですが、その方の最期はベッド上で食事をされているときに意識を消失され、そのまま亡くなられました。病院で働いていたころは、熱発すれば絶食にして治療上我慢することは当然のように思っていました。

しかし、この出来事をきっかけに本来、人の最期はこうあるべきではないのか?と考えるようになりました。事前にご家族ともよく話し合い、ご本人の希望通り最後まで大好きな「食べる」ことができ、とても印象強かったです。

「このまま働いていると看護師だけの人生になりそう」とワーホリを決断

看護師を辞めたくてワーホリに行ったのですか?

木川さん

嫌になって辞めたというよりも、ワーホリに行くには辞めるしかなかったという感じです。5年目で辞めることにしたのは、これ以上続けたらタイミングを逃してしまいそうだったので。

日本で働いている時にワーホリに行こうと考え始めたのですか?

木川さん

ニュージーランドの時はそうです。オーストリアは婚約者に出会ってからビザのためのワーホリですね。海外旅行が好きだったことが元々のきっかけで、海外に一度は住みたいという気持ちが強くなってきました。

最初に就職した公立病院の仕事がけっこうハードだったんです。仕事が嫌だったわけではなく忙しいなりに楽しく過ごしていました。でも、「このまま病院で働き続けていいのか」「看護師だけの人生でいいのか」という思いもあり、いったん病院から離れることにしました。

この時はまだたった5年の看護師経験でしたが、様々な患者さんや医療スタッフとかかわることでもっと自分の考え方や価値観を見直したいとも思いました。
また、5年目は委員会などの役職が付き始めるころで、これ以上続けたらやめるタイミングを逃してしまいそうだったので。

婚約者さんとはどこで出会いましたか?

木川さん

日本です。二人で話し合って今はオーストリアに住んでいます。将来的には日本に帰ることも視野に入れています。

海外生活での心の変化、看護師への思いの変化

ワーホリはどこの国に行きましたか?

木川さん

新卒後、5年間働いてニュージーランドにワーホリで行きました。ニュージーランドでは日本の看護師免許が使えないのでカフェやケーキ工場で働きました。
病院のヘルパーとして働く選択肢もありましたが私は医療と関係ない仕事をしました。

オーストリアに行った経験もあります。
でも、オーストリアでは親戚の家の手伝いを中心に過ごしていたので仕事の経験はありません。英語だったらある程度話せるのですが、住んでいた地域がドイツ語中心の地域だったのでコミュニケーションに苦労しました。
ウィーンは英語も通じますが地方になると働くにはドイツ語が欠かせないですね。

ニュージーランドではどのように過ごされていましたか?

木川さん

ニュージーランド中をドライブして旅行しました。働くか旅行するかといった感じです。ニュージーランドでは医療に携わる機会はありませんでした。

ワーホリで印象的だったことは?

木川さん

いろいろありますが…。世界にはいろんな人がいて、いろんな考え方があるんだなと感じる日々でした。家族で過ごすことを大切にしていて、仕事中心というよりも家族中心な人生を送っているような印象を受けました。

日本に帰ってきて心境の変化や気づきはありましたか?

木川さん

病棟看護師の経験しかなかったので多様な働き方を知れたことがよかったです。他人からの評価やどう見られるかなどをすごく気にしている部分がありましたが、以前よりは周りの目を気にすることが少なくなったと思います。すごく楽になりました。

一度現場を離れることで、看護師という仕事をいろんな角度から見直すことができたと思っています。忙しい病棟で働いていると、つい一つの角度からしか見えなくなってしまっていました。看護師以外の仕事をして、やっぱりやりがいのある仕事だと思いましたし、これからも続けたいと思いました。

海外移住するには言語の壁の突破を最優先する

海外移住をする際にどのような点で苦労しましたか?

木川さん

文化や仕事も苦労しますが、まずは何よりも言語の壁を突破することが大変でした。
言語の壁を突破することで次の課題が見えてくる感じです。相手の言葉がわからないと何も始まらないのかなと思います。

オーストリアで働く際に言語以外に日本との違いはあると思いますか?

木川さん

文化や宗教が異なるので、考え方や価値観も日本人とは違う部分があるのではないかと思います。
しかし、個人によっても変わってくるので、患者さん一人一人にあった看護を提供すると考えれば大きくは変わらないのかもしれない、とも思っています。

海外で看護師をすることに不安はありますか?

木川さん

以前は海外で看護師として働くなんて絶対無理だと思っていました。日本でかつ母国語である日本語でコミュニケーションを取っているにもかかわらず、医療ミスやインシデントが日々起こっていました。これを海外の外国語で行ったらどんな事故が起こってしまうのかと不安でした。

でも、日々働く中でいろんな矛盾ややりづらさを感じたときに、海外の看護師はこんな時どうしているのだろうか。と考えはじめたのがきっかけに、他国の看護を学んでみたいと思うようになりました。

また、ドイツ語を習得するにあたり、目標がぶれないようにしたかったので、オーストリアで看護師免許取得することを目指すようにしました。

オーストリアで看護師免許取得を目指す現在

現在はオーストリアでドイツ語の勉強しながら看護師免許取得を目指しているのですね。

木川さん

はい、そうです。まだまだドイツ語は初心者なので時間がかかりそうです。目標は看護師免許取得できるレベルにまでなることですね。

オーストリアでの看護師免許取得の条件を教えて下さい。

木川さん

まず、語学のランクが6段階あり、下から4番目のランクに入らないと看護学校に入ることができません。看護学校だけでなく留学してきた外国人も同じように語学の資格を取得して学校に入学します。

語学の勉強がとても大切ですね。

木川さん

そうですね。オーストリアでも看護師免許は大学や看護学校で取得できます。公用語のドイツ語が上達すれば看護の勉強も捗ると思います。ですので、今はドイツ語のレベルを上げることを最優先しています。情報収集するにも言葉がわからないと進みません。

オーストリアは移民が多いので受け入れるためのシステムは充実していると感じます。語学のレベルを上げて、看護学校に入学して、国家試験を受けるので長い道のりです。焦らずにじっくり取り組んでいきます。

日本の看護師免許がそのまま使えると早かったですね。

木川さん

看護師の仕事に言葉は大事ですよね。言葉が通じないと看護師はきついと思います。いずれドイツ語の勉強はしないといけないのでしょうがないかなと思います。

オーストリアの看護師の働き方は日本と異なりますか?

木川さん

まだ情報収集中で詳しいことはわかりませんが、看護師の仕事範囲は日本よりも狭いみたいです。すでにヨーロッパで働いている看護師の方のブログを読んだりして情報収集しています。

勉強以外の日常はどのように過ごしていますか?

木川さん

家事をしています。掃除したり料理したりです。料理に関しては新しいものにトライしています。オーストリアの料理は味がしっかりしていて塩味が強いのが特徴な気がします。ドイツ料理に近いイメージです。

オーストリアの人は日本人と気質が似ている部分があるので接しやすいです。病院が多く医療が充実しているので安心して過ごしています。(病院が)多すぎるという指摘もあったようですが今はそのおかげで新型コロナウイルスにも対応できているみたいです。

オーストリアの医療と日本の医療の違いを感じる場面はありますか?

木川さん

国民皆保険制度を採用している点では同じですね。
ただ、「Eカード(保険適用の範囲や自身の診療記録を確認することが出来るシステム)」を持っていないと診察が受けられません。オーストリアでは病院での支払いがなく公費でまかなわれる場合があります。

海外移住と看護師としてのキャリアは両立できる

海外移住と看護師としてのキャリアの両立は難しそうに思えるのですが。

木川さん

ワーホリに行く前は看護師としてのキャリアをとても気にしていました。日本で5年間働いたのに経験年数がストップしてしまうのはどうなのかなと思って…。でも、日本に戻って看護師を再開してみると「大切なのは経験年数だけじゃない」と思えるようになりました。

日本での看護師時代の先輩で海外での海外留学経験がありながらも認定看護師として活躍している先輩がいました。海外移住と日本での看護師としてキャリアを両立しているお手本となる方が身近にいたのは大きかったですね。その方は一旦退職してイギリスに行き、帰国してから同じ職場に復帰して認定看護師の資格を取得したそうです。

とても素敵な方でしたよ。

その先輩との出会いが海外移住のきっかけになったのですか?

木川さん

いえ、もとから自分で海外移住のことを考えていました。たまたま先輩にそのことを話してみたら、「私も海外移住の経験があるよ」と教えていただけた形です。身近な看護師にワーホリ経験者が多かったです。

「まずは挑戦してみた方がいい」一歩踏み出す勇気を持つ

将来的には日本とオーストリアのどちらで働くつもりですか?

木川さん

すごく悩んでいます。今後は結婚をして育児もしたいと考えているので、どのような環境を選ぶべきか考えますね。
理想はオーストリアと日本の半々で生活できたらいいのかなと思っていますが、それに到達するにはまだまだ努力が必要になりそうです。

海外移住を考えているけど、一歩踏み出せない看護師へアドバイスをお願いします。

木川さん

勇気を持って退職するしかないです。(笑)長く同じ職場で働いていると役割や役職が増えて辞めにくくなりますから。お手本になるような先輩を見つけるのも一つの手もしれませんね。

私自身もまだ挑戦中なので偉そうなことは言えませんが、とりあえずやってみましょう。やってみないと何もわからないし始まらないと思います。頑張ってください。

まとめ

今回はワーホリを経験し、オーストリアでの看護師免許取得を目指す木川さんに海外移住についてお伺いしました。海外移住を考える方は情報収集しながら、「いつ」移住するのか強く意識する必要があるのかもしれません。

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