患者さんにイライラしてしまうときの対処法を教えてください
看護師1年目、30代女性、透析室勤務
社会人経験を経て看護学校を卒業し、看護師1年目です。現在透析室で働いていますが、正直“うざい”と感じる患者が多く毎日うんざりしています。
もともと営業職をしていましたが、身内が大病をして入院したときに看護師さんによくしてもらったことが忘れられず、自分も看護師になりたいと思って医療の世界に飛び込みました。
しかし、自分が看護師になって働きはじめると、私は何のために看護師になったのだろうか?と思わずにはいられないほど横柄な態度や理不尽な要求をしてくる患者さんが多く、相手は「患者さん=お客様」と頭では思っていても、ついイライラしてしまいます。
皆さんはこういう経験ありませんか?そんなときはどのように対応しているのでしょうか?
自分の器の狭さを日々痛感して自己嫌悪してしまいます。
まずは日々の勤務お疲れ様です。看護師は「白衣の天使」と言われることも多く、穏やかで優しいイメージだけが独り歩きしています。
医療ドラマなどでは、横柄な態度をとる患者さんに対して寄り添っていき、ときにはその患者さんが抱えている心の闇にまで迫って万事解決!みたいな展開を目にすることがありますよね。
でも、それは医療ドラマだからできる美談であって、実際ほとんどの看護師が常に患者さんに対して1日1回以上はイラッとすることがあるのは当然のことです。もはやイラッとしない菩薩のような看護師を探す方が難しいのではないかと思います。
今回は10年目の私が出会ってきた、ついイラッとしてしまう“うざい”患者さんの傾向と対策についてご紹介します。
“うざい”と感じる患者の傾向とは?
皆さんは看護学生のとき、患者さんへの対応について座学でも実習でも学んできたことでしょう。
実際に、国家試験の必修科目のなかでも患者さんに対する対応について問うような問題が、必ずといっていいほど出題されています。
その多くの“患者対応”については、看護師だからという特別な技術を要するものではなく、世間一般的なサービス業に共通する常識問題のように感じることも多いのではないでしょうか?
たとえば、93回の看護師国家試験には次のような問題が出されました。
午前問題5:患者の自己決定を擁護する看護師の行動で誤っているのはどれか。
1.患者が理解できない説明は省略する。
2.患者の希望を尊重する。
3.患者に説明し同意を得る。
4.患者が質問する機会を作る。
もちろん誤っている行動は1で、これは勉強していなくてもわかりそうなものです。
ほかの対応は看護師として正しい行いになりますが、看護師10年目の私はこの問題の2は、はたして本当に看護師の正しい行動なのか、と日々自問自答してしまいます。
なぜなら、いわゆる“うざい”と感じる患者さんに共通する傾向は、自己中心的という特徴があてはまるからです。
自己中心的な患者の希望を尊重していたら、看護師の身が持ちません。現場の看護師はどのように対応しているのか、私が出会った“うざい”と感じる自己中な患者さんを一部ご紹介しましょう。
看護師を悩ませるモンスターペイシェントの実態
モンスターペイシェントとは、医療従事者に対して自己中心的でかつ理不尽な要求を繰り返す患者やその家族などを指し、通称“モンペ”と呼ばれています。私は普段ICUで勤務をしているのですが、ICUは急性期病棟で入室される患者さんはもちろんのこと、命の危機にさらされた重篤な患者さんがほとんどです。そこで出会ったAさんとそのご家族がまさしく“モンペ”でした。
Aさんは2型糖尿病を患い数年前から透析導入もしていて、心機能も弱った60代の男性ですが、度々内服を自己中断しており500を超える血糖値と過剰な水分摂取で心不全が悪化し、こん睡状態で家族に発見されました。
ICUに搬送後、透析とインスリン療法など治療を進め血糖値が下がって元気になってきた頃には、自己中心的な行動が目立つようになっていました。5分ごとのコール、家族による持ち込み食の摂取、禁止された携帯電話の使用などがはじまったのです。
また、拒薬、昼夜問わず看護師に手足のマッサージを強要し、少しでも待たせると「いつまで待たせるつもりだ!謝罪しろ!」という暴言と唾吐きなどの暴力行為もみられました。
この件について、再三ご本人とご家族も交え、医師や師長から看護師のマンパワーからすべての対応について希望を叶えることが難しいと説明をしましたが、
「看護師は患者のために尽くすのが当然。病院でいう患者はお客様で、お客様は神様だろう」
と一切取り合ってもらえない状況が続いたのです。
まるで絵に描いた様なモンペ発言の連続と、Aさんのご家族自身にも迷惑行為を助長しているという自覚がなかったため、院内のハラスメント対策部門に相談したうえで、当初の入院予定を変更し5日程で転院手続きを取りました。
まずは身を守る方法を知っておこう
今回ご紹介した例は、あくまでも究極の“モンペ”の実話ですが、頻回のナースコールやルールを守ってくれない患者さんはどこの病院でも一定数存在し、看護師がイラついてしまうことが多い理由になっています。
そして、ここで押さえておかなくてはいけないのは「看護師と患者」の立場は一見すると「店側と客」という立場に似ていますがまったくの別物だということです。
我々看護師の業務は、法律上、医師の診療の補助業務と患者の療養上の世話であって、医療行為においては診療報酬という点数が認められています。
しかし、療養上の世話に対しては、患者の苦痛を支援するという観点から、目に見える苦痛だけではなくスピリチュアルペインについてのサポートも含まれているのです。
これがいつしか、過大解釈につながり「看護師=何でも屋」につながってしまっていた原因だと考えられます。
もちろん、患者さん全員が横柄な人ばかりではありません。問題行動の裏には認知症や高次機能障害など疾患による患者さん自身でも避けられないものもあるでしょう。
近年はハラスメントが取り上げられ、行き過ぎたサービスの強要や治療の拒否、暴言・暴力に対して法的措置を取ることができ病院で働く医療者の身を守ってくれます。
まずは、勤務している病院ではどのような取り組みが行われているか確認してみましょう。
・院内暴力・ハラスメントについてどのような取り組みがされているのか
・自分が受けている行為はハラスメントに当たらないのか
・過去に同様の事例がない
このように、ハラスメントに対する病院の取り組みについて調べておくことは、自分自身だけでなく病棟スタッフ全員の身を守ることにつながるため、非常に重要なことです。
横柄な態度をとる患者の心理とその対応
では、訴えるほどではないけど、ついイラついてしまうような患者さんは、どのように対応するのがよいのでしょうか。
基本的には「傾聴と共感」です。看護師なら誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
患者さんは、何かしらの疾患や障害を抱えて入院しています。思うようにいかないことや慣れない入院生活でストレスが溜まり、ついつい身近にいる看護師にあたってしまうというのは心理的に仕方がないことだといえるでしょう。
そして、看護師から見るとその人個人は大勢いる患者さんのうちの1人にしかすぎませんが、患者さんからすると看護師は自分の生命を左右しかねない重要人物で、自分が中心にいないことに対して不安を感じやすくなります。
このような場合は、子どもが興味を引きたくて問題行動を起こすような心理に近いと考えてみましょう。
また、5分や10分でもその人に向き合う時間を日々意識することで、自分を大事にしてもらっているという満足感が得られ改善されることもあります。
業務に追われているときに患者さんから声をかけられると、つい「ちょっと待っていてください」と言いがちです。しかし、その「ちょっと」が患者さんにとっては果てしない待ち時間になってしまうこともあります。
具体的な時間の目安を伝えるか、3回に1回対応を変わってもらうなど、人やタイミングをうまく利用してチームみんなで共有しましょう。
また自己中心的な人は、立場が低い人に対して強く出る傾向があります。そのため、主治医や師長、主任に相談したり、1対1で対応せず誰かに間に入ってもらったりするなどして自分ひとりの問題にしないことも重要です。
やってはいけない対応とは?安易に謝罪しないこと
先ほど、「傾聴と共感」が大切と述べましたが、あまりにも頻回に同じような問題行動であなた自身が疲弊しているときに「謝罪しろ!」と言われたらどうでしょう。ついその場を収めようとするために「すみませんでした」と言ってしまうことがあります。
しかし、安易に謝罪してしまうことこそが、やってはいけない対応なのです。
もちろん、約束していた時間を守れなかった場合や明らかにこちらに落ち度がある場合には謝罪は必須ですが、勝手な行動に対して一度謝罪や許容してしまうと前例を作ってしまい、後々更なるトラブルに発展しかねません。
たとえば、「お前が悪い、謝罪しろ!」に対しての傾聴と共感の姿勢は、
「私が悪いと思われたのですね」
だけです。
謝罪については、
「私1人の判断ではできかねますので、上のものを呼んでまいります」
と対応しましょう。
また、基本的に患者さんには“ため口”を使わないようにします。
マナーとして当然ですが、つい慣れ親しんだ患者さんに対してなどには油断すると“ため口”が出てしまうスタッフも多いものです。
親しき仲にも礼儀ありという言葉のとおり、言葉遣いが相手をイラッとさせてしまうきっかけにもなりやすいので注意しましょう。
割り切って思っていることを伝えることも大事
看護師も人間です。コミュニケーションをとる上で心を無にすることなど意識していてもなかなかできないものです。思い切って、
「いまのその言葉に私は傷つきました」
「いまは忙しいのでご希望に沿うことができません」
「ほかに私がお手伝いできることであれば精一杯対応させてもらいます」
など、こちらの思っていることを伝えてみると、相手の上がりきったボルテージも下がることがあります。
自分も周りも傷つけない方法を作ろう
患者さんに対して、ついイラッとしてしまうと「自分の器が小さいのではないか」と自責の念に駆られてしまうことがありますよね。しかし、お互い人間同士であるため、相性はあります。ダメな人はどんなにこちらが頭を悩ませてもダメな場合もあるのです。
そこで、私はイライラ貯金という方法を行っています。対応が難しいと思った患者さんを対応したときには、自分を褒める意味でポイントを加算していくのです。
ポイントが溜まったら好きなお菓子をご褒美に買うことにしています。ほかにも、人目につかないところでマスク越しに愚痴を漏らすこともあります。
また、まるで自分が悲劇のヒロインになったかのように勝手にストーリーを作ってみたりして、あえてその状況を楽しむようにもしました。
患者さんに不利益にならず、自分の心のうちに秘め、トラブルさえ起きなければどんな対応でも大丈夫なものです。
まとめ
どんなに腹が立つ患者さんであろうと、それは病院内で看護師と患者さんの関係のときだけです。「所変われば品変わる」で病院から一歩出れば、その呪縛からは解放されます。
また、患者さんとの関係は永久的に続くわけでもありません。
モンペ対応は精神的にダメージを受けることが多いので、スタッフ間で励まし合いながら自分に合った付き合い方、イライラ解消法も日々マニュアル化して乗り越えていきましょう。
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