インシデントを立て続けに起こしてしまい自信をなくしています。
2年目看護師、25歳女性、外科病棟勤務
最近、仕事中にインシデントを起こすことが増えたように感じています。私一人の責任のものから、代表して私がインシデント報告をするものまで種類はさまざまです。また、ときには「こんなことまで報告するの?」と疑問に思ってしまうこともあります。
周りの人たちは「大丈夫。私も昔はよくインシデント起こしていたから」と言ってはくれますが、どこか自信をもって仕事をできない自分が辛いです。
インシデントを未然に防ぐ方法はありますか。また、細かなインシデントを報告する必要性はどういったものがあるのでしょうか。
看護師で「インシデントレポートを書いたことがない!」という人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
さらに、相談者さんのように一度のインシデントで平常心を乱されてしまうと、立て続けにインシデントを起こしてしまうことも珍しくはありません。かくいう私も、同じような経験をして落ち込んだことのある看護師の一人です。
また1年目を終えて、プリセプターや先輩の目が新しい1年目看護師に向きはじめるこの時期は、インシデントをもっとも起こしやすい時期といってもいいです。そのため裏を返せば、インシデントに正しく向き合う良い機会であるとも考えられます。
今回は、インシデントをなぜ報告する必要があるのかということを含めて、インシデントの捉え方や、発生を限りなく少なくする方法について解説していきます。
なぜインシデントを報告する必要があるのか
そもそも、なぜインシデントの内容の大小に関わらずレポートとして報告する必要があるのでしょうか。それは、インシデントの主な理由が「再発防止」だからです。看護師国家試験の問題としても出題されるほど重要な理由となっています。
どの病院にも医療安全の観点から、看護を実施するまでさまざまなチェック項目やルールが決められていますよね。代表的なものだと、ダブルチェックや声出し確認といったものがあるでしょう。
これらの安全対策は、これまでの看護の歴史のなかで起こったインシデントをもとに定められていることがほとんどです。
そのため、「なんでこんな面倒くさいことする必要があるのだろう?」と感じるルールでも、過去にそれを怠ったために引き起こされたインシデントがあるはずです。
また、とても些細なインシデントでも一歩間違えば重大な損害を患者に与えることにもなりかねません。
そのため、迷ったときはひとまず報告しておきましょう。「このぐらい、いいか」と思って先輩や上司に報告していないと、私のようにあとで大目玉を食らうことになります。
このように、インシデントの報告には「再発防止」という明確な理由があり、看護師として看護の質を向上させるためにしっかりと報告をおこなう義務があります。
インシデントをゼロにすることは可能なのか
結論からいうと、インシデントをゼロにすることは不可能に近いです。
看護師といっても人間ですから、その日の体調や予期せぬトラブルによってインシデントは引き起こされます。
また、患者を相手にするという仕事の関係上、自分の状態だけでなく患者の状態によってもインシデントが引き起こされる可能性があるからです。
しかし、インシデントをどう受け取るかによって、発生を限りなく少なくすることはできます。
自分がインシデントを起こしたとき
自分のミスが原因でインシデントが起こったとき、落ち込まない人はいません。次の日の仕事に行きたくなかったり、看護師に向いていないじゃないかと考えたりしますよね。インシデントが続くようなことがあれば、なおさらそう思うのではないでしょうか。私がインシデントを起こしたときには「みんなは自分のことどう思っているかな」「仕事ができない看護師と思われている」など、ほかの看護師や医師の目ばかりが気になっていました。
相談者さんのように先輩たちは「大丈夫」とはいってくれますが、なかなか気持ちを切り替えて仕事には望めなかったのを、いまでも鮮明に思い出せます。
インシデントを起こしたときには、まずは気持ちを落ち着かせることが重要です。同僚に話してみれば、同じような体験談を聞けるかもしれませんし、上司や先輩に相談すれば的確なアドバイスをもらえるはずです。
人によって気持ちを落ち着かせる方法はさまざまですが、インシデントと向き合うにはそれからでも遅くはありません。むしろ、不安定な状況でインシデントレポートを書いたり、看護をおこなったりすると、同じミスや別のインシデントを引き起こす可能性もあります。
冷静になってから、再発防止のためにインシデントレポートを書きながら状況の整理を行いましょう。インシデントを冷静に分析できれば、効果的な再発防止につながるはずです。
また、相談者さんのように複数人の看護師が関与しているインシデントも珍しくありません。自分のなかでは無関係だと思っていたのに、先輩や周りの雰囲気から自分がレポートを書かざるを得ないこともあります。
こういった場合「なんで私が書かなければいけないの」と理不尽に感じてしまいますよね。しかし正確に状況を伝えるレポートを書けば、当事者ではないことは一目瞭然となりますし、今後そういったことはなくなるはずです。
自分以外のインシデント報告を聞いたとき
ほとんどの場合、病院内や部署内で起こったインシデントは、医療安全会議などを通して職員に通知されます。このとき「そういうことがあったのか」で済ませるのではなく、自分のこととして受け止めましょう。インシデントを少なくするためには、自分や他人に関わらずどういった状況で引き起こされたのかを知っておくことが重要です。
「自分ならばどういった行動をとっただろうか」「自分の部署でも似たような事例はなかっただろうか」といったように、インシデントの状況に自分を落とし込んで考える癖をつけておきましょう。
まとめ
インシデントレポートは再発防止の点において、とても重要な役割を担っています。
インシデントの報告は辛いものですが、長い目でみれば自分やほかの看護師だけでなく、病院全体の看護の質を向上させる重要なものです。そのため、ほかの看護師に正確に内容を伝えるために、インシデントの発生状況を冷静に分析してしっかりとレポートで報告しましょう。
またインシデントで落ち込んだときには、信頼のおける同僚や先輩、上司に話を聞いてもらったりアドバイスをもらったりして、気持ちを落ち着かせましょう。
これから相談者さんも経験を積んで、新人看護師からインシデントの相談を受けるようになると思います。そのとき、どうやってインシデントを繰り返さないように考え行動したかを伝えられるよう、今回の解答を参考にインシデントに向き合ってみてください。
イシンデントに関するお悩みは、こちらの記事でも詳しく解説していますので、よろしければ参考にしてみてください。
参考記事:看護師のインシデントを防ぎ、安心・安全を高めるには?