患者さんとの会話を弾ませるコツを知りたいです。
1年目看護師、23歳女性、慢性期病棟勤務
看護師として1年目が終わろうとしており、ひとりで担当の病室を回る機会も増えてきました。先輩の看護師が一緒のときは、先輩が患者さんに話を振って3人で会話が弾んでいましたが、ひとりだと患者さんと会話を弾ませるのに難しさを感じています。
患者さんと会話が弾まないと、入院生活での悩みなどを引き出せていないのでは……と不安になります。
先輩看護師に聞いてみても、「感覚的なことだからうまく説明できない」と言われ解決にいたっていません。何かコツなどはあるのでしょうか?
ご相談ありがとうございます。日々の看護業務に手いっぱいにならず、患者さんとの会話にまで気が回っているのは、この1年でとても成長されたのだと感じます。
相談内容のとおり、患者さんとの会話は、入院や疾患に関する悩みを表出させる点からみても非常に重要なコミュニケーションです。しかし、看護学校や看護師になってからも患者さんとの会話に関しては、あまり学ぶ機会がないのも事実です。
先輩の看護師は「感覚的なこと」と話しているようですが、おそらく無意識に実施しているだけで、患者さんとの会話を弾ませるコツというのは存在します。
そこで今回は、「患者さんと会話を弾ませるコツ」と「患者さんとの会話から見る看護の意味」について解説していきます。
患者さんと会話を弾ませるコツ
看護師として患者さんと会話するというシチュエーションは、会話の相手がなんらかの疾患を抱えているという点で普段の会話とは大きく異なります。
抱えている疾患にもよりますが、健康な状態であれば会話が弾む人でも、入院生活によるストレスで塞ぎ込んでしまって会話が弾まないといった人も珍しくありません。
では、そういった患者さんを相手にどのような姿勢で臨めば、会話を弾ませられるのでしょうか。
表情や声のトーン
患者さんと会話をするときの看護師の表情や声のトーンは、会話自体の雰囲気を決定づけるため、私たちが思っているよりも患者さんに与える影響は大きいといわれています。たとえば、業務に追われているときに患者さんから話しかけられて、そっけない態度などで対応してしまったために、その後の日常的な会話やケアに影響が出たという話もありますので注意が必要です。
相談者さんもケアや処置の際には、柔らかな表情と声のトーンで患者さんの不安軽減に努めるために、声掛けを行っていることでしょう。
先ほどの注意点に気を付けつつ、ケアのときと同じような表情と声のトーンで会話ができれば、話しやすい雰囲気ができ会話も弾むはずですよ。
会話が弾むような展開の方法
勇気を出してこちらから話を振っても、「はい」や「いいえ」で会話が終わってしまっていませんか?看護の技術として質問の方法を学びますが、この場合は相手の返事を限定するクローズドクエスチョンになっている可能性が高いです。
患者さんとの会話を弾ませるのを意識するならば、オープンクエスチョンを使用するように心掛けましょう。
たとえば、いつも野球を見ている患者さんに話しかけるときに「野球がお好きなんですか?」と話しかけると「はい」か「いいえ」の回答しか得られない可能性が高くなりますよね。
この場合は「応援している球団はありますか?」など、返事の内容の幅を広げ患者側に会話の主導権を渡してあげるようにしましょう。
オープンクエスチョンは、こちらの価値観を押し付けることなく患者主導で会話を展開できるので、会話を弾ませたいときには効果的な方法であるといえます。
普段の生活の様子やカルテの記録から話題を選ぶ
共通の話題や、相手の興味のある話題を選んで会話するのは、会話を弾ませるうえで効果的な方法です。看護師と患者さんの会話が通常の会話と大きく違うのは、自分が受け持ちでないときに、どういった会話をしているのかをカルテや同僚の看護師から情報を得られる点です。
「病気の話をしていることが多い」「家族の話が多い」などの情報を事前に得ていれば、患者さんの興味ある話題を振り会話を弾ませる助けになるでしょう。
患者さんとの会話に自信がない場合、こういった方法で事前に話す内容をある程度選んでおくのがおすすめです。
患者さんとの会話から見る看護の意味
患者さんとの会話は信頼関係を構築し、治療がスムーズに実施できるという点において重要なコミュニケーションのひとつです。
会話を弾ませることがある程度簡単になってきたら、次のステップとして患者さんとの会話がどのようにして看護に結びつき、信頼関係の構築になぜつながっているのかを意識していきましょう。
患者さんのストレス軽減
疾患や治療とは直接関係のない会話でも、社会や普段のコミュニティから離れている患者さんにとっては、ストレス軽減という点で重要な役割を担っています。私自身、患者さんと話した後に「長々と関係ない話をしてしまい、すみませんでした」と伝えたときに、「何気ない会話は気が紛れて助かります」と言ってもらったことがありました。
また、看護学生が実習で患者さんと話していたあとに、「病室の人同士だと、お互いの病気の話しかしないから楽しかった」といった言葉を聞いたこともあります。
このように、何気なくおこなっている会話でも、入院中の患者さんにとっては良い刺激となりストレス軽減に役立っていることを理解しておきましょう。
患者満足度の向上
「効果的な治療と疾患の完治」は、退院後の患者満足度を測るうえで重要な要素です。それと同等以上に、「日常的な看護師との関わり」は患者満足度に大きく影響します。日常会話の態度が悪かったり、おろそかにしたりすると「病気は治ったけど、看護師の対応はイマイチだったな」といった印象を与えてしまいます。
一生懸命に看護を実践しても、これでは無事退院したとしても看護を行ったとはいえませんよね。お互いが信頼関係をもって治療を終えたときこそ、看護を受けたという事実が残るのです。
そのため、日常的に会話が患者さんの満足度につながることを理解し、患者さんから「良い治療だった」という評価を得られるよう意識して患者さんと会話していきましょう。
まとめ
患者さんとの会話を弾ませることは、一見看護と関係ないように感じても信頼関係の構築やストレス軽減などの点において、立派な看護の一部分となっています。
たとえ会話の時間が1分やそれに満たなかったとしても、患者さんが良い印象を受ければそれは会話が弾んだといえるでしょう。
相談者さんも患者さんに「良い治療だった」と思ってもらえるよう、患者さんと会話する際は今回解説したコツや注意点を意識して実施してみてくださいね。