病院看護師よりワクチン会場勤務の方が待遇が良いのが納得いきません
29歳女性、看護師7年目、外科病棟勤務
就職を機に地元を離れ今日まで勤務してきました。最近は地元の病院への転職なども考えており、看護師の求人をチェックする時間が増えてきました。
求人サイトでよく新型コロナウィルスのワクチン会場での求人を見かけますが、時給などを見ると病棟看護師よりも待遇が良いように思えます。
世間では新型コロナウィルスによる医療への負担がニュースになっていましたが、私の病棟でも、予防や患者対応の面で大きな負担となっています。
あまり良い言い方ではありませんが「ワクチンを打つだけ」が仕事の看護師の待遇が良いことに納得がいきません。
なぜワクチン会場勤務の看護師の待遇が良いのでしょうか、教えてください。
新型コロナウィルス感染の収束の目処が立たない中、病棟での看護業務お疲れ様です。
今回の質問内容ですが、たしかに求人サイトなどで見るワクチン接種会場の看護師の待遇は好条件なものが多いです。この条件だけ見ると相談者さんのような疑問を抱くのも不思議ではありません。
しかし、本当にワクチン接種会場の看護師の待遇が良いのでしょうか?給与面はもちろん、勤務形態の面からも待遇について説明していきます。
また、将来性や病棟看護師の方が優れている点についても説明しますので、職業選択の参考にしてみてください。
ワクチン会場勤務の待遇
待遇とは、給与や勤務時間などの労働者の取り扱いを表す言葉です。これらの面から、実際にワクチン会場勤務の待遇は良いのかどうかを判断してみましょう。
給与事情
首都圏のワクチン会場勤務における平均日給は、1万5000円~3万円となっています。月給25万円の看護師の場合、日給換算で1万2500円です。つまり、ワクチン会場勤務における平均日給の最少額1万5000円の場合でも、十分な額ですよね。また、日給3万円であれば月給60万相当となることを考えれば、ワクチン会場勤務は給与面において好待遇といえます。
日給2万円の看護師募集の場合でも、コロナ病棟で働いていた看護師が職場を辞め、ワクチン会場勤務で働くというケースも珍しくありません。さらに、求人サイトによっては「日給10万円」の好待遇を提示している接種会場もあります。
看護師としての職場決定において、給与面は重要な要素のひとつです。そのため、あくまで日給だけを判断材料とするならば、日給2万円を超える求人なら転職を考慮する余地がある待遇といえます。
勤務形態
ワクチン会場が稼働している時間を調べると、開始時間に差はあるものの勤務時間としては8時間となっています。夜勤はないので遅い会場でも20:00には勤務が終了するようです。しかし、ワクチン接種の最終受付が20:00ということは、その後の片付けなどを考慮すると勤務終了は20:00以降になりそうです。また、ワクチン接種可能な人数は、会場によって500人の会場から2000人の会場などバラつきが見られます。
病棟では、入院患者や緊急手術などのイレギュラーな業務の発生は珍しくありません。一方、ワクチン会場では1日のスケジュールが大きく変わることは、あまりないでしょう。
そのため、「忙しくて休憩がとれない」「残業しないと記録が終わらない」などの病棟勤務でありがちな問題は起こりにくいです。
なぜ待遇が良いのか
ワクチン会場勤務の待遇が、良いと感じるのは業務内容と日給に大きなギャップがあるからです。たしかに「筋肉注射」自体は看護のなかでもそれほど難しい技術ではありません。それでは、難しい業務ではないにもかかわらず日給が高いのはなぜなのでしょうか。
それには、「需要と供給」が関係しています。ワクチン接種を実施数や、供給されるワクチン数から、接種会場は必要な医療職者の人数が算出されます。
人数が多くなればなるほど、医療職者の需要が高くなります。つまり、医療従事者の取り合いが始まるわけです。その結果、一人でも多くの医療従事者を確保するため、日給の平均額が底上げされます。ワクチン会場で、業務内容に対して日給が良いのはこういった状況が関係しているのです。
ワクチン会場勤務の今後
ここまで説明した、ワクチン会場勤務の待遇だけを見ると「じゃあワクチン会場勤務の方が良いじゃないか」と感じるかもしれません。しかし、一概にそうとは言えないので注意が必要です。
看護師需要は続くのか
先ほど、ワクチン会場勤務の待遇が良い理由として、看護師の需要が供給を上回っていることをあげました。注意が必要と述べたのは、この看護師需要が永久的に続くものではない可能性が高いからです。新型コロナウィルスは、今でこそ感染収束の目処はたっていません。しかし、いずれは治療薬や錠剤タイプの予防薬などの開発、感染者の減少によるワクチン接種者の集中緩和などが予想されます。
このように、新型コロナウィルスへの対策が日々進んでいった先に、いずれは看護師需要も落ち着くと考えられます。業務自体は無くならないかもしれませんが、現在のような給与面での待遇は望めないでしょう。
病棟勤務のメリット
相談者さんは、現在病棟勤務とのことですが病棟勤務の方が優れている点も数多くあります。最も代表的なのは「将来性」です。ワクチン会場勤務は、良くも悪くも「筋肉注射」を実施するだけです。そのため、対象者の看護を考えることもなければ、新しい技術を身に着けることもありません。一方で、病棟看護は、日々容態が変化する患者に対して、最適な看護計画を考え実施していきます。
また、ワクチン会場勤務では管理職や専門看護師、特定認定看護師などのキャリアアップは望めません。目指す看護師像があり、今よりも成長したい人は、病棟での看護を続けるのが賢明といえます。
また、給与面だけの待遇をみれば病棟に比べ、ワクチン会場勤務の方が優れていると感じるかもしれません。しかし、妊娠や出産その他有事の際の福利厚生は、病院の方がしっかりと整備されている可能性が高いです。
たとえば、人材派遣会社を経由してワクチン会場勤務となった場合、有事の際の保障は考えられていない場合もあります。
「待遇」に福利厚生を含めると、ライフワークバランスを考え、さまざまなイベントに柔軟に対応できる病棟の方が、待遇面において優れているとも考えられます。
まとめ
新型コロナウィルスの感染拡大によって、看護師の需要が高まりワクチン会場勤務の給与面は高くなっています。一方で、近年は新型コロナウィルスの影響で病棟業務も必要以上の負担がかかっています。
そのため、一見すると待遇が良く見えるワクチン会場勤務に、納得がいかないと感じでも不思議ではありません。
しかし、長期的に見れば看護師需要が永久的に続くものではないことや、福利厚生面で不安が残る点から、病棟勤務の方が将来性はあると考えられます。
給与以外の面や自分の看護師としての将来像が実現可能かどうかを踏まえ、現在の環境よりもワクチン会場勤務の方が優れているのかを判断してみましょう。
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