看護師なのに医療デマを流してしまって後悔している
27歳女性、5年目看護師、病棟勤務、転職経験あり
私は27歳の5年目看護師です。幼いころからオカルトや迷信に惹かれる傾向があったと自己分析しています。そして、いま一番後悔しているのが、医療デマを信じ、身のまわりの人やインターネットに流してしまったことです。
「うつは甘えで、製薬会社が薬漬けにして売り上げをあげるためのもの」
「母乳を飲まなかった赤ちゃんは発育不全になる」
「ワクチンは副反応がひどく、けいれんを起こしている若い女性の写真は本物」
といったものです。我ながらひどいと思います。そして、目が覚めたきっかけは、この度のコロナウイルスの医療デマです。
「コロナウイルスは26-27度のお湯で死滅するのでお湯を飲みましょう」
というチェーンメールが回りました。
そこで「体温は36度だよね」というインターネットのつっこみをみて、はっとしたのです。私はなんてことをしてしまったのだろうと。もちろん、このデマを流したのは私ではありません。しかし、似たようなことを、私も考えていたのです。これを総じて医療デマだと知り、身も凍る思いです。
どうしたら、この罪を償えるでしょうか…
看護師が偽医学・医療デマの片棒を担ぐというのは、非常に問題です。そして、隠れた問題として、医療界に存在するのです。
ただ、これらのデマを扇動しているのは多くの場合、医師だと考えられます。医師はわかってやっており、医療デマを流す看護師はなんとなく流してしまっている、それが現状ではないでしょうか。
正しい情報発信を心がける
結論をいうと、正しい情報発信を心がけるほかありません。それができないなら、医療に関しては沈黙を守ること。なぜなら、下手に取り消そうとしても、混乱を招いて、自分の立場が危うくなるだけだからです。
あなたは、こうして当サイトに匿名で相談を寄せてくれました。まだ引き返せます。よって、これからは不正確な情報やプロフェッショナル性を疑われるような発信はやめて、医療リテラシーを高めてください。
いちばん市民や患者さんに近い立場の看護師であるあなたが頑張らないと、医療リテラシーの崩壊を招いて危険です。
さらには、この質問が寄せられた2020年4月現在、日本と世界はコロナウイルス蔓延による非常事態下にあります。東京を中心として、各地に緊急事態宣言が発布され、政府も医療機関も国民も、限界ぎりぎりで耐えています。
そこにあなたが医療デマを流すことが、どれだけ医療の現場を疲弊させ、迷惑をかけるかよく反省して、あとは勉強をし直すのがいいのではないでしょうか。
看護・医療リテラシー教育を受けなおす
今のあなたに必要なのが、看護・医療のリテラシー教育を受けなおすことです。ようは学びなおしです。看護理論、医学が、どのように成り立ち、同時に非科学がどうやって心のスキにつけいるのか。そうしたことを中心に学ばれるのがいいと思います。
患者さんの訴えをよく聞く
よく理解していただきたいことなのですが、非科学・偽科学・医療デマというものは、一般の人たちの「不安」をベースとして広まります。
なぜ医療不安が起こるのか。たとえば、熱と咳が激しく、体が非常にだるいのに、保健所がPCR検査してくれないという人が周りにいたとします。自宅待機といわれても、体調が著しく悪化しているのに、誰もよりそってくれない、そんな人本人や、周りでそういう噂をきいたとき。
また、感染症蔓延などの社会不安が起きているとき。そんなときの大きな心理的動揺が、医療デマに救いを求めてしまうのです。
では、正しい知識を持った看護師に何ができるか。患者さんに不安によりそうことです。訴えを聞き、本当の主訴は何かいち早く見抜き、しかるべき症状を聞き取って、医師とのコミュニケーションの間にはいる、そうした寄り添う力が、医療デマを打ち消してくれます。
患者さんたち、一般の人たちは、非常に不安なのです。病院はいつも混雑していてなかなか話を聞いてもらえなかったり、感染症などが蔓延して自分が体調を崩しても、救いの手が差し伸べられなかったり。そうした不安にデマがつきまといます。そしてその不安を打ち消せるのは看護師しかいないのです。
よって、看護師として、医療デマを流してしまい後悔しているのであれば、何か大きなこと、派手なことをするのではなく、まずは目の前の患者さんの不安によりそい、取り除くことをおすすめします。
それが、看護師としての正しい姿であり、同時に贖罪にもつながるのではないでしょうか。そう考えます。
正そうとせず、距離を置く
さらに、大切なのはデマとは距離を置くことです。いったん発信された医療デマや偽医学は、発信者の手を離れて、人々の不安とともにどんどん遠くに運ばれて行きます。よって、今更何かをすることはできないのではないでしょうか。
よって、正そうと情報を逆流させるのではなく、距離を置くことぐらいしかできません。それもあなたがやってしまったことなので、そうして償っていくしかないのです。
まとめ
看護師として少しでも医療デマを流したことを後悔しているのなら、できることはあります。くれぐれも二度と、偽医学をばらまくことはせず、周りに何も言わず、黙って偽医学のコミュニティを離れてください。
そして、新しい場所で正しい情報発信を心がけ、同時に目の前の患者さんを大切にすること。それが一番いい手です。
繰り返しになりますが、人々の不安の結果、偽医学は増大してウイルスのように次々うつっていきます。よって、その不安の輪と連鎖を断ち切ることが、看護師にできることとなります。
医学的な知識でというよりは、よりそう力によって、ケアのパワーで、不安によりそって、ひとりひとりの偽医学にやられる心のスキを埋めていくのがいいのではないでしょうか。
偽医学の情報パンデミックと不安の心理的パンデミック。どちらも相関しています。よって、いま看護師にもとめられること。それはひとりひとりへの不安に耳を傾けることなのです。