衛生観念の低い患者を持ったら
4年目看護師、病棟勤務、衛生観念の低い患者への対処法を知りたい
受け持った患者さんの衛生観念が低くて対応に困っています。女性の患者さんで入浴や着替えを拒否し、ベッドサイドがどれだけ汚れていても気にしない様子です。
私が入浴や清拭、環境整備を促し介入しようとすると、とても迷惑そうな表情で「止めてください」と言われてしまいました。先輩看護師に相談もしてみたのですが、先輩も同じように対応に困っているようです。
衛生観念の低い患者さんを持ったときにはどのように対応すべきなのでしょうか。
清潔保持することはセルフケアの大切な要素であり感染予防の観点からも重要です。しかし、大切だからといって患者さんに説明しても簡単に行動変容できるとは限りません。
人間にはそれぞれの価値観があります。ましてや長く生きている人ほど、それまでの人生経験で培ってきた価値観が確立されているものです。
患者さんの話をよく聞き、様々な角度からアセスメントしてみましょう。思わぬ解決策が見つかるかもしれませんよ。
清潔援助が大切な理由
まずは看護師が清潔援助をする理由を正しく理解しておきましょう。清潔援助の目的は①セルフケアの促進②皮膚の生理機能を正常に保つ③爽快感を得る④全身観察の4つです。
①セルフケアの促進
セルフケアの促進は入院中の患者さんに起こりがちな意欲低下を防止します。清潔保持を通して活動意欲を高め、セルフケアの意識を高めることが目的です。②皮膚の生理機能を正常に保つ
皮膚の生理機能とは外的刺激から身体を保護する、体温調節作用、知覚作用、ビタミンDの合成作用などです。皮膚の清潔保持ができていないと生理機能が阻害されてしまいます。③爽快感を得る
爽快感も清潔援助の大切な目的の一つです。清拭や入浴を通して感覚的な爽快感を得るだけでなく、コミュニケーションを深めるきっかけともなります。④全身観察
全身観察は皮膚の状態だけでなく外見上から判断できる体内の異常の発見にも繋がります。前回の観察との違いを比較していくことがポイントです。看護師と患者さんの衛生観念のズレを認識する
今回の患者さんでは看護師と患者さんの衛生観念にズレが生じています。ゴードンの機能健康的健康パターンでは「健康知覚-健康管理パターン」にあたる部分です。
健康知覚-健康管理パターンは、患者さんの病気や健康状態に対する認識をあらわします。この認識にズレがあると、どれだけ看護師が説明しても患者さんの行動変容を促すことは難しいでしょう。
患者さんの価値観を知るために情報収集をする
患者さんの健康知覚-健康管理パターンを知るためには情報収集が必要です。カルテや患者さんとの会話から衛生観念についてどのように認識しているか情報収集していきましょう。
・入院の目的、治療方針の理解度
・今後どのような健康状態を目指したいのか
・入院前はどのように清潔保持していたのか
・どれくらいの間隔で入浴していたのか
・家と病院の環境の違いをどのように感じているか
上記のような情報を収集していきます。
チームでカンファレンスを行うのも有効です。看護師も患者さんも1人の人間なので相性があります。話しやすい相手とそうでない相手がいることを知っておきましょう。
他の看護師の意見を聞くことで、これまで見えていなかった患者さんの価値観を知ることができるかもしれません。
介入拒否する理由をアセスメントする
患者さんの衛生観念に関する情報収集ができたらアセスメントしていきましょう。清潔援助の介入拒否の理由で多いのは①身体的理由②心理的理由③環境面での理由の3つです。
①身体的理由
身体的理由は衣服の着脱に時間がかかる、身体が冷えてしまうなどの負担を気にすることです。高齢になるほど皮膚は乾燥し発汗量は減り、身体の汚染を感じにくくなります。また身体の動きもスムーズではなくなるため、短時間での入浴や清拭ができません。自分では身体がそれほど汚れていないと思っているため、負担の大きい入浴や清拭を行うことがめんどうに感じるのです。
②心理的理由
心理的理由は清潔援助してもらうことや保清自体への抵抗感です。元々入浴が好きではなかった人は入院していてもやはり清潔援助に前向きになることは難しいでしょう。たとえ入浴が好きだった人であったとして、看護師に介助してもらうことに抵抗を感じる場合もあります。また、いくら看護師がプロであるとはいえ、異性や年齢が大きく離れた人からの清潔援助に抵抗感がある場合も考慮しましょう。
③環境面での理由
環境面での理由は家と入院中の環境を比較することでわかります。特に入浴へのこだわりが強い患者さんほど環境面の変化の影響を大きく受けがちです。例えば、家ではゆっくりと時間をかけて入浴していても入院中はなかなかそうもいきません。介助を要する患者さんであれば看護師の都合に合わせた入浴時間を指定されることもあります。
家では個室での入浴でも、入院中は大浴場になってしまうことはよくあることです。トイレとの距離も不安要素になっているかもしれません。家庭環境は患者さんごとに異なることを想定しておきましょう。
心身状態を理解した上で対策を提案してみる
最後にアセスメントを基に対策を提案していきましょう。患者さんの希望をすべて叶えることは困難です。しかし、部分的であれば代替案を提案できます。
例えば、入浴時間にこだわりのある患者であればチームの看護師と相談して入浴時間を調整してみましょう。異性や年齢の離れた看護師に対して羞恥心がある場合は、年齢の近い同性が対応するのが有効です。
入浴が好きでなかったり、身体的理由を訴えたりする患者さんには看護師が介助し、短時間で済ませることを説明していきます。このように、患者さんに合わせた介入がポイントです。
入浴に限らず清拭や更衣、環境整備も同様にアセスメントして介入していきます。患者さんの価値観を知り、介入していくには信頼関係が欠かせません。普段のコミュニケーションを通して良い関係を築けるように努めましょう。
まとめ
衛生観念の低い患者さんが必ずしも清潔援助が嫌いだとは限りません。自分なりに保清できていると思っていることもあります。
看護師との認識のズレがあれば保清が大切な理由を説明しながら認識の修正が必要です。どのような価値観を持っているのか情報収集しアセスメントしていきましょう。