看護師の仕事はあいまいなことが多くてモヤモヤする
20代女性、回復期リハビリテーション病棟勤務
看護師の仕事は、ほかの医療職と比べてあいまいな部分が多くて悩みます。医師であれば診断・治療、薬剤師であれば薬の管理・説明といった役割がはっきりしているのに、看護師だけができる役割というのがわかりません。
もちろん、人を相手にする仕事なので予定通り進まないことがあることは理解できます。しかし、マニュアルやクリニカルパスがあるものの、仕事の進め方は看護師個人の考え方によって違います。看護計画も人によって違い何が正解なのかわかりません。
看護師の仕事がどのようなものか理解できずに働くことはツラいです。正直、日々の業務で「これは看護師の仕事なの?」と思ってしまうことが多々あります。どのように考え方を変えていくべきなのでしょうか。
おっしゃるとおり、看護師の仕事はあいまいな部分が多く個人の判断で行動すべき場面が多いです。看護師独自の仕事と言えるものも少なく、アイデンティティがわからなくなることもありますよね。しかし、個人の考え方の基盤には必ず看護師としての価値観があります。
同じ仕事をするにしても、しっかりとした価値観にもとづいていれば迷うことも少ないのではないでしょうか。看護師の仕事の基盤となる価値観を説明しますので参考にしてみてください。
「看護覚え書」を振り返ってみる
ナイチンゲールの「看護覚え書」によると、看護は「体内の回復過程を促進させること」であり、看護でないことは「生命力を消耗させること」と定義されています。とても抽象的な概念で理解しにくいかもしれませんので例をあげてみます。
夜間の吸引の場面を思い浮かべてみてください。決められた時間に機械的に吸引をする行為は、もしかすると患者の生命力を消耗させているかもしれません。必要に応じてアセスメントし、患者への侵襲を最小限にすることで体内の回復過程を促進できます。看護師の判断によってその場で取るべき行動が変わるのが難しいですよね。
このように看護師の仕事は、看護覚え書の時代から抽象的に表現されています。そのため、はっきりとした業務範囲や判断基準はないことが多いです。看護師としての考え方の基盤があり、その場で最善を探っていく職業と言えるかもしれません。
看護師は「維持」のスペシャリスト
看護師はチーム医療の中でも患者の状態を「維持」することに長けています。状態の維持とは、手術や化学療法といった侵襲の大きい治療をしている患者であれば合併症の早期発見に努めることなどです。退院が近い患者であれば退院日まで症状を安定させることが看護師の役割です。
患者の状態はさまざまな要因により変化します。疾患や治療による影響だけでなく、入院生活の一つひとつ動作やストレスも要因です。日常生活動作が安全に行えるように支援し、ストレスによる心身への影響を最小限に留めることが看護師の大切な役割と言えます。
看護師はチーム医療における情報強者
「チーム医療」という言葉を耳にする機会が増えました。他職種連携のポイントのひとつが情報共有です。看護師は患者の側で過ごす時間が最も長く、多くの情報を持っています。カンファレンスなどで他職種に情報提供することで患者のニーズに的確に応えることができます。
たとえば、身体機能や認知機能の衰えにより内服管理が難しくなってきた患者を想像してみてください。この患者が退院後も内服を自己管理するには介入が必要ですよね。看護師が医師や薬剤師に情報提供し、内服変更や一包化などの対策をします。
もちろん、看護師自身が指導したり内服カレンダーを準備するよう促したりするのも有効です。患者と相談してどのような手段が適切か考えていきましょう。
このように看護師はチーム医療において情報を多く持ち他職種へ共有する役割があります。普段から他職種連携を意識して観察の視点を広げておくと良いのではないでしょうか。
患者にとってはあいまいさが身近に感じられる
患者にとって大きな悩みのひとつが「誰に相談すべきかわからない」ということです。相談内容がはっきりしており、各職種の特徴をしっかり理解している患者は少ないのではないでしょうか。また、相談したい医療者がいてもなかなか機会がないということも考えられます。
そのような患者にとって業務範囲が広く相談しやすい看護師の存在はとてもありがたいものです。「困ったことがあったらとりあえず看護師に相談してみよう」このように看護師には何でも気軽に相談できると思われています。
看護師にとってあいまいさはモヤモヤする原因かもしれません。しかし、患者目線で考えるとそのあいまいさは相談しやすい相手と捉えられます。患者目線をもつことでモヤモヤも多少和らぐのではないでしょうか。
日常の業務をすべて「看護」と捉える必要はない
看護師の業務範囲はあいまいなことがあり、「これも看護なの?」と思うこともありますよね。とくに慢性的な人手不足を抱える職場であれば看護師があらゆる雑用をこなさなければなりません。
雑用を含むすべての業務を「看護」と捉えようとすると必ず解釈に苦しみます。「これは看護ではないな」と感じたら、深く考えずに割り切ってしまうことも大切です。もちろん、雑用をこなす中で看護につながる発見もあります。しかし、雑用にまで意味を見出そうとすると疲れてしまうのでおすすめできません。
また、看護ではない業務を割り切って行うことで視点が広がることがあります。フラットな視点で業務を見ると看護師・他職種・患者の本当のニーズが見えてくるかもしれませんよ。将来、後輩が同じように悩んだ時にアドバイスできると良いですよね。
まとめ
今回は看護師の仕事のあいまいさを乗り越えるための考え方の基盤についてご説明しました。はっきりしない部分が多く迷うかもしれませんが、他職種や患者からすると看護師は多くの情報を持っており広く業務ができる頼れる存在です。
また、看護師の仕事内容は所属する病院や部署により大きく異なります。職場によっては看護師の仕事がはっきりしており、あいまいさが苦手な方には働きやすい環境です。
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